【制御性T細胞】大阪大学坂口志文氏 ノーベル生理学・医学賞受賞

サイエンス

2025年10月6日、ついに大阪大学坂口志文先生ノーベル生理学・医学賞を受賞されました!
これは非常に胸が熱くなります。
と言うのもこの私、かつて免疫学で研究員をしておりました。もちろん坂口先生にもお会いしたことがあります。

本日は坂口志文先生と、坂口志文先生が発見された免疫細胞「制御性T細胞(Treg:読み方…ティーレグ」について説明していきたいと思います。

今か今かと待たれていたノーベル賞受賞

坂口志文先生(以下、坂口先生)は免疫学の権威で様々な賞を受賞されてきています。

2009年には紫綬褒章を賜り、2015年には「制御性T細胞の発見とその役割の解明および応用」への貢献を評価され、ガードナー国際賞を受賞されています。

後述しますが、制御性T細胞とは免疫細胞の中でも重要な細胞であり、それを発見された坂口先生は何年も前からノーベル賞候補として注目されていました。
ノーベル賞受賞者の発表時期になると、報道陣が研究室の周りをうろついていたほどです。

坂口志文先生の略歴

氏名:坂口 志門(さかぐち しもん)
生年月日:1951年1月19日
出身地:滋賀県長浜市
出身校:
 滋賀県立長浜北高等学校
 京都大学 医学部医学科 卒業(1976年)
 京都大学院 医学研究科(中退)

1976年 医学部卒業後、医師免許を取得し大学院へ進学。
1977年 愛知県がんセンター研究所 実験病理部門に研究生として参画。
1983年 京都大学で医学博士号(医学)を取得。
その後、米国ジョンズ・ホプキンス大学やスタンフォード大学などで研究活動を行う。
スクリプス研究所などで免疫学研究に携わる。

1995年 東京都老人総合研究所 免疫病理部門 部門長
1999年 京都大学再生医科学研究所 教授
2007年 京都大学再生医科学研究所 所長
2011年 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 実験免疫学分野 教授
2013年 大阪大学 特別教授
2016年 名誉教授(大阪大学・京都大学)、株式会社レグセル創業(CTOに就任)
2017年 大阪大学 栄誉教授
2025年現在 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 特任教授/栄誉教授


坂口志文先生の受賞歴

2003年 持田記念学術賞
2004年 William B. Coley Award
2005年 武田医学賞、高峰記念三共賞
2007年 文部科学大臣表彰科学技術賞
2008年 上原賞、慶應医学賞
2009年 紫綬褒章
2012年 朝日賞、日本学士院賞、米国 National Academy of Sciences 外国人会員選出
2015年 ガードナー国際賞
2017年 クラフォード賞
2019年 ドイツ免疫学会賞、文化勲章受章
2020年 ロベルト・コッホ賞
2025年 ノーベル生理学・医学賞

研究テーマ

坂口先生の偉業は制御性T細胞を発見されたことです。
今回はその功績が評価され、ノーベル賞を受賞されました。

坂口先生の研究の中心は「免疫寛容」に関するものです。
免疫寛容とは、外敵を攻撃する免疫のシステムが、自己の成分や無害な異物(食べ物や花粉など)に対して免疫反応を起こさずに、それらを受け入れる仕組みのことです。

この仕組みがあるおかげで、健康な人であれば自己免疫疾患やアレルギーを防ぐことができます。

この研究において発見されたのが制御性T細胞であり、免疫学界での世紀の大発見とも言われています。

制御性T細胞とは?何がすごいの?

簡単に言うと、制御性T細胞(Treg)とは外敵を攻撃する免疫細胞を抑える働きをする細胞です。

この細胞があるおかげで、健康な人は自己免疫疾患を患うこともアレルギーに困ることもありません。
花粉や食べ物などの無害なものに免疫が反応した時、それを抑えるのが制御性T細胞の働きなのです。

ではこの制御性T細胞がなぜすごいのかというと、この細胞の研究をすることで、これまで難病指定されていた(治療法がなかった)自己免疫疾患の治療やアレルギーの治療の研究が大きく進めることができるようになったのです。

坂口先生は現在、大阪大学の免疫学フロンティア研究センターで、この制御性T細胞を用いた自己免疫疾患の治療法の研究もされています。

株式会社レグセルのCTOを務める

坂口先生はご自身の研究成果を世の中で活用するために、株式会社レグセルを創業され、CTO(最高技術責任者)に就任されました。

株式会社レグセルでは、制御性T細胞を応用した事業が展開されています。
主に、無害な外的に反応したキラーT細胞を制御性T細胞に変換してしまうことで自己免疫疾患の治療法を研究開発しています。

株式会社レグセルはもともと本社が京都にありましたが、途中大阪大学に移り、その後2025年にアメリカへ移転しています。
今後の活躍が注目を集めますね!

坂口先生の研究秘話

坂口先生が制御性T細胞の発見に至る成果を挙げるには、ご婦人の教子(のりこ)先生のことは語らずにはいられません。
マウスを何千匹も扱う泥臭い研究を、教子さんと共に歩んでこられました。
一時期は教子さんも株式会社レグセルの社長を務めるなど、精力的にお二人で歩んでこられました。

研究室にはお二人がいらっしゃるので「坂口先生」とは呼ばず、「志門先生」「教子先生」と呼び分けていました。

坂口先生はとても寡黙な先生でありながら、それでいてとても穏やかな笑顔をたたえておられる先生です。
研究の大変なご苦労があったからこその、穏やかさだったのかもしれませんね。

坂口先生は制御性T細胞の発見で、医学界や科学界に多大な貢献をされ、数々の賞を受賞されてきました。
受賞されるたびに胡蝶蘭が研究室いっぱいになっていたのを私は見たことがあります。
研究室どころか、何部屋もある職員の居室にも胡蝶蘭が溢れており、とても良い香りがしたのを覚えています。

今回は満を持してのノーベル賞です。
きっと坂口先生の研究室はこれまで以上に胡蝶蘭であふれることでしょう。

この場を借りて、坂口先生にノーベル賞を受賞されたことを心からお祝い申し上げます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました